第1回中国朱鷺保護視察団 派遣報告

視察目的

  • 野生のトキ繁殖および生息地の状況
  • トキ繁殖により手狭になったトキ飼育センターの状況
  • 将来、トキを守ってくれる奥山の子供達との交流
  • 陝西省林業庁との交流

日時

平成13年10月 9日(火)出発
平成13年10月16日(火)帰国

参加者

村本義雄会長を団長とする、6名です。

日程

10月 9日(火)晴れ

午後3時30分名古屋空港より出発
上海を経由して午後8時30分西安空港に到着
陝西省野生動物保護協会の常秀雲副秘書長の出迎えの車に乗り西安市内のガーデンホテルに着く。
ホテルの一角には村本義雄会長が撮影したトキの写真と募金箱が設置してあって、かなりの募金が入っていた。

10月10日(水)晴れ

午前7時30分出迎えの車は秦嶺山脈の山肌を縫うように走り一路、トキの生息する洋県へ、

途中洋県三角殿村で昼食する。

午後5時10分洋県の宿泊施設に到着、陝西省朱鷺保護観察所の曜天慶副所長の出迎えを受け
名刺の交換をして挨拶をする。休む暇なく、塒へ帰るトキを観察する為林業庁の職員と共に出発する。

午後5時50分、洋県ソウバ村の塒近くに到着してトキを待つ。

洋県村には「保護朱鷺人人有責」(みんなでトキを保護しましょう)とコンクリート製の看板が設置してあり、付近の農民は農薬や化学肥料は使用していない。

トキの塒がある洋県では今だに牛の農耕を続けている。

洋県トキ監視員のうち2人も同時に塒着いた。空に雲が少ないので山に沈む夕日がきれいだ。
午後6時10分トキが西の方から2羽飛来。夕日が山に隠れてもまだ明るいのではっきり確認できる。
6時23分東方より4羽飛来。6時27分北方より2羽飛来。
合計8羽確認できソウバ村の塒に羽根を休めた。

午後6時32分、1羽が「クワアークワアー」と鳴き声を発しながら林の上を旋回した後8羽全部で飛び立っていった。

何処へ行ったのかと聞くと、「外のトキが沢山集まる塒へ移動した」とトキ監視員の説明があった。
明日早朝5時に起床して、監視員の案内でトキが沢山集まっているネグラを確認することとなったので、早々に就寝する。

10月11日(木)晴れ

早朝5時30分に林業庁の迎えの車に乗り込む。
外は真っ暗で街灯も無いのに沢山の歩いている人や自転車に乗っている人がいる。
学校や仕事に出掛けるそうだ。道路舗装の無い山道を走るので右に左に車がゆれる。
6時05分車での終点に着いて下車。懐中電灯を頼りに泥道を歩いて6時30分トキの塒に着く。
夜が明けると「ダム湖の緑の松林に白い鳥が見えるのがトキだ」と案内してくれた監視員の説明が
あって塒から出るトキを待った。

ダム湖の左側の林と右側の林にそれぞれ数羽の群れが確認出来る。
中央部の白い鳥はコサギだそうだ。カメラのシャッターを押すとフラッシュが発光してしまうので
写真は撮れない。
6時45分コサギが北の方角飛び立つ。
6時57分トキの1羽が昨日と同じく鳴き声を発しながら1回、2回と林の上を旋回する。
それを合図に全部のトキが北方へ飛び立った。全部で36羽確認できた。

7時45分朝食のため一旦帰舎、食事を済ませ、トキが行ったと思われる餌場の確認に出掛ける。
10時、洋県白石郷韓家湾村のダムに着く。

トキはいなかったが湿地帯に多数の足跡を確認する。

午前10時40分餌場を後にする。昼食時、ホテルで洋県長、副県長にお会いし
団員がそれぞれ名刺を交換し交流した。
洋県に到着して初めて会った何志強陝西朱鷺保護観察所長と職員に対して
「我々日本中国朱鷺保護協会はトキ増殖及び保護の為支援活動を続けていく」旨の挨拶をし歓談した。

10月12日(金)曇りのち雨

午前6時30分、洋県草場村に到着。6時40分トキ4羽が西の方角の餌場へ飛び立つ。
続いて 6時45分11羽が、6時53分2羽が飛び立った。

陝西朱鷺保護観察所を視察し、何志強所長にトキ保護支援金を手渡す。

飼養センター内には飼育舎の不足でドジョウの養殖池を改良してネットで囲んだ
限られたスペースの中で沢山のトキが飼育されている。

飼養センター横にはトキを野生に返す練習施設の大網籠が建設中である。
支柱の一番高いところは35m、延べ面積は約7,300m2である。

大網籠は今年11月中に完成し、12月には2000年に生まれたトキを30羽入れ1年間訓練して
2002年12月には自然界に放鳥する予定である。

21世紀にトキを守ってくれる子供たちの学校に机を寄付するために、午後から洋県草場村小学校
へ出向いた。子供たちはもちろん、草場村長はじめ学校長、先生達が挨拶、朗読、唄、踊りなどで
歓迎してくれた。

草場小学校へ子供達の学習机の購入資金を手渡した。

草場小学校、5年生が書いたトキの絵(小学校訪問の際に託されたトキの絵)

10月13日(土)曇り時々雨

午前6時25分、洋県高家河村のネグラに到着。一昨日よりも沢山のトキが確認できる。
6時52分トキが飛び立つ50羽が確認できた(同行している洋県林業庁職員の発表)。 

朝食後、漢中に向けて出発。午後3時45分漢中市内に入り、平成11年9月に国際朱鷺研討会が開催されたホテルに到着して泊まる。

10月14日(日)雨

午前7時40分、西安に向けて出発。
途中、車窓から見た紅葉は美しかった。秦嶺山頂で記念撮影をした。

10月15日(月)曇り

午前8時30分、陝西省林業庁の権林業庁長を表敬訪問した。

権志長林業庁長の挨拶の要旨
「20年前に7羽発見された中国のトキは現在340羽余りにも増えている。これは日本政府、国民の
支援による成果であり感謝している。特に毎年訪ねる村本義雄氏を尊敬している。
また、村本義雄氏を会長としたNPO法人日本中国朱鷺保護協会の設立をお祝いします。」
(通訳は常秀雲、野生動物保護協会副秘書長)

村本義雄会長の挨拶の要旨
「今回中国へきた目的は年々増え続けるトキ保護の管理の現状と将来の対策を視するためです。、
林業庁の努力に敬意を表します。トキは日中友好の象徴です。
今回は洋県の小学校に机を贈り大歓迎を受けました。 最後になりますが陝西省林業庁職員が
日曜日を返上して案内していただき無事に目的を達成することが出来、感謝してお礼を申し上げます。
ここにトキを愛する日本の皆さんからのトキ保護支援基金を贈呈します。」

左、権林業庁長、右、村本会長

陝西省自然保護区野生動物管理所、曹永漢所長(中央)を訪問し意見交換する。

午前10時、西安近郊の陝西省周至県楼観台森林公園内にある野生動物救護センターを視察。

以前、この周辺にも沢山の野生トキが生息していた。その裏には林があり将来トキが営巣できる施設も建設予定との説明を受けた。
ここは洋県のトキ飼養センターが狭いため、以前キンシコウがいた飼育舎だがトキを養う施設に改造中で
何時、洋県からトキを移すかは未定であった。
1つのスペースが 間口5m、奥行き10m、高さ5mの寸法で中には2箇所のとまり木と約2m丸のコンクリート製の餌場が設置してある。
トキが飛んで移動する際、怪我をしないように鉄製の箇所には幾重にも布が巻いてあった。
現在工事中だが、1つの籠に4羽入いる予定で全部で7つの籠が完成する。

トキ飼育の準備のためにドジョウの養殖池を視察した。

愛嬌を振りまくパンダのチョオチョオ
キンシコウ

その他いろんな動物が飼育されてました。

10月16日(火)曇り

午前7時30分、西安のホテルを後にする。

第1回中国朱鷺視察団に参加して

トキを守る人々の心に感動

奥畑小百合

 初めて見る中国そして初めて見るトキの飛翔。美しいトキ色と村本会長を出迎えてくれるかのように、
トキが8羽そろってネグラ上空を大きく旋回してくれたのには感動しました。
トキの監視員や指導される方達の熱心さと、草場小学校で村長さんはじめ村中の方々が集まって
子供達の歌や踊り、先生方の歌での大歓迎に胸が熱くなりました。
人々の素朴で純粋な温かい心と、牛と荷車の田畑に子供の頃にタイムスリップしたような気持ちになりました。ほっとするような心落ち着く温かさを感じました。
トキが住めるところは人間にとっても一番良い環境であり、心身に一番良い所である事が分かりました.。
恵まれた自然の環境で日本の空にもトキが飛翔する日が来る事を祈ります。

第1回中国朱鷺視察団を編成して

村本義雄

NPO法人日本中国朱鷺保護協会を設立して初めて中国朱鷺保護視察団を編成して10月9日に出発し
8日間の日程を終えて10月16日に帰国しました。この度の訪中の目的は世界で唯一野生のトキが生息する中国陝西省洋県を訪問して野生トキ、飼育トキの現状視察しました。現地の陝西省林業庁や陝西朱鷺観察所の関係者から朱鷺保護対策について詳しい説明を受け協議しました。洋県に生息している野生のトキは150羽余りと飼育されているトキが145羽生息しています。現在、特に緊急な対策として飼育舎の不足です。昨年育った若いトキと今年生まれた幼鳥はドジョウの養殖地や飼養センター付近の林の中にネットを張って飼育していました。
若鳥が巣ごもりし成鳥に育っても資金が無く繁殖舎の増設が出来ない状態です。
飼養センターに隣接して建設中の大網籠は延べ面積約7,300m2で中央の鉄柱の高さは35m、周囲の柱は16mの柱を20本立てたトキを野外へ放すための訓練施設です。
この施設も資金不足のためNPO法人日本中国朱鷺保護協会は全国からの募金と寄付金をトキ保護基金として贈りました。
この施設は今年11月完成させ12月中に今年生まれた幼鳥30羽を籠内に放鳥させ1年間自然の中で
生活する訓練をして2002年12月野外へ放すとの説明がありました。
以上、視察の目的を無事果たし、帰国しました。